2020.4.22

ネオ・ノーマルに向けて - 代表からのメッセージ –

ネオ・ノーマル

今回のCoronavirus (COVID-19)、我々スタートアップの経営環境も大きく変化し、まさに完全なるパラダイムシフトがおきました。
これまでの攻めの経営から一転して、日々生々しい現実や数字との対峙し、短期と長期施策のバランスを保ちながらも、社員(雇用)を守り、企業を守る施策と経営判断を行う、つまり戦うスタンスを取りながら、守りの経営にシフトすることが強いられています。
 
シタテルでは、既に3月の社内カンファレンス時に事業推移のシミュレーション(PL)とキャッシュポジション(term)を社内共有し、企業として、そして、ひとりひとりが「だとすれば?」という思考のスタンスを持ち、この局面を乗り切るために事業に取り組んでいます。
同時にafterコロナ、つまり「ネオ・ノーマル(元通りの状態にはならない状況)」に向けて、シタテルのミッション遂行の速度を上げて実行するという、さらに難易度の高い状況を乗り越えるべく思考を張り巡らせています。
 
前時代のスタートアップの環境を振り返ると「資金を燃やして拡大だ」「採用強化だ」と、事業の蓋然性(収益化が出来ていない状態)が乏しい中でのインフレ感は、やや高揚した状況だったのかもしれません。スタートアップでなくても、上場企業でさえ売上高が30~40%減る状態が半年推移すれば、資金が尽きる企業が続出する可能性が高まると言われており、今後も国民が想像している以上に影響は拡大し、まさにサバイブ時代突入といった状況です。
 
2014年の創業以来、我々シタテルは場所に依存しない「インターネットによる衣服生産プラットフォーム」を提供してきました。
シタテルとして今できること、社会的な責任を果たしながらも、目先に囚われ過ぎず「この先」から目を背けることなく、本来やるべきこと(ミッションの実現。企業をリーンな状態にすること。ネオ・ノーマルに向けて設計・実行すること等)に集中して事業を進める必要があります。
 

衣服の市場

あらゆるWEBメディアでも、最大の経済収縮に直面する可能性があるとされており、金融、世界経済、日本経済、各産業において様々な「今後どうなるのか?」が語られています。当然、この衣服産業・市場にも影響が出ており、各国のマクロ的な見解を見つつ、現場とのミクロの会話を通して、私自身国内外の衣服に関する市況や感じたことについてまとめてみました。
 
現時点における具体的な数値予測として、2020年のファッション・アパレル事業者の業績は平均前年比で約30%減少すると予測されています(2021年に2~4%のプラス回復する可能性)。グローバルファッション企業においても今後12~18か月の間に、多くの企業が倒産すると予想されており(2018年に56%の企業が資本コストを稼いでいないことも影響)、ハイブランドにおいては30%減とも言われています。オンライン販売でさえヨーロッパ全体で5~20%、米国では30~40%、中国では15~25%減少していると言われます。日本におけるオンライン販売については、EC化率の潜在的向上率が高いため伸長と予測されています。
 
今後はパンデミック以前に、すでに苦労していたアパレル企業は衰退し弱体企業が一掃され、統合(M&A)、破産等が加速し、本質的な一部の企業だけが成長します。大手アパレルであっても(北米とヨーロッパで上場している企業)34%が今後2~3か月で店舗閉鎖し、その先では2倍以上の80%を超える可能性が予測されています。
 
店舗含め、少なくとも現時点で小売ビジネスが「通常」に戻ることを示唆する情報はありません。事象対応的な売上高(利益の確保)の一時的な改善・企画だけでは、今後の継続していく全体支出の減少を相殺することはおそらく不可能なので、財務管理の徹底が必要です。また、これまでのディスカウント(バーゲン)カルチャーは、関係する事業者を全方位で悩ませた上、反消費の増加、在庫の急増、継続取引の縮小に繋がり、今後支出を抑える消費者によってさらに悪化することになります。
 
今後は一気にDX化が加速し、販売のオンライン化や完全受注生産型へ移行する必要性が高まり、ビジネスプロセス・ワークフロー改善が必要になってきます。特に販売においては、NordstromのCEOであるPete Nordstrom氏が『販売する商品以上の価値を与え、常にイマジネーションを働かせながらカスタマーとのつながりを構築し、彼らが何を求めているのかを敏感に察知できるブランドこそが、これからも生き残ることができる』と語るように、緊縮する消費者にリーチするために、ブランド本来の「価値(オリジナリティ)」を提供し、ミッションと事業を最適なものになるよう再考した上で、大胆かつ敏速に事業基盤を再構築する必要があります。
 

サプライチェーン

国内の製造・生産背景においても稼働率が低減しており、50~80%の工場が主要製品の生産は減少し、マスクなどを代替え生産し、なんとか稼働率を高めようと努力している状況です。このような状況から脱却するためには、事前に回避出来るポイントを見極め、ローカルでサプライチェーンを統合・強化することが必要です。また、工場・サプライヤーも自社独自の販売力・調達力を高めて「取引のポートフォリオを分散・最適化」し、弾力性のある経営を行う必要性が高まっています。
 
グローバル全体で捉えるとさらに深刻で、最も大きな打撃を受けるのは発展途上国などで、バングラデシュ、インド、カンボジア、ホンジュラス、エチオピアなどの、低コストでの調達先および、ファッション製造のハブにいる労働者にとって、この影響による長期の失業は貧困の蔓延と飢餓と疾病を意味しており、医療システムが不十分な環境下で致死率が加速することが予測されています。
このグローバルな貿易の混乱から、自社独自のバリューチェーンを再構築する必要があります。
 

デジタルシフト

最も優先度が高い、コスト削減と無駄のない生産、チャネル・ラインナップの簡素化、事業流動性の確保などの短期的な削減施策を実施する一方で、ネオ・ノーマルまでのアクションとして、人員計画や指標を再設定し、手売りの事業を縮小する計画が必要です。様々な削減施策をドラスティックに実行した上で、ネオ・ノーマルを想定した「デジタルプロダクト」に移行出来るよう、計画にフレキシビリティを持たせる必要もあります。
 
今後は人材、時間、在庫に対する課題および将来の投資に関しては「デジタルプロダクト」に優先順位を付け、既存事業のROIを正確に追跡しながら、マーケティングコストを下げ、プロダクトの検証速度を上げる、受注生産の精度を上げる、DBを統合する設計を構築するなど、デジタルチャネルにシフトし対応する必要があります。
デジタルプロダクトは最適化されバランスの取れた顧客体験(CX)と成長率を優先するモデルであり、収益率は高くとも、収益額が低い可能性があるため、決して、手売り事業の収益の不足を補うための「特効薬」ではない、最重要な位置付けにしておく必要があります。
 

パラダイムシフト

奇しくも年頭所感で話していた状態が、このような形で、一気に加速し動き始めることになりました。
残念ながらこのパンデミック、来月に終わるこということも、半年・1年ですべてが終息するということも考えにくいでしょう。これまでの手法・ロジックは陳腐化し、事実を受け止め、新たに「設計」したことを「実行」することだけが、次のステップへ進める唯一の手段です。
過去を脱ぎ去り、まずは想定と実働のギャップ、危機感のズレを修正するところから始め「弾力性」を持ち、変化する環境に合わせてどれだけ速く進化できるかが鍵となります。未来から目を背けず、ネオ・ノーマルに向けて設計・実行することのみが、危機を超えて成長できるようにするための鍵です。
 
シタテルとして、ネオ・ノーマルな社会・経済に向けて「いま何を実行すべきか?」「だとすれば?」を常に問い、行動に移すと同時に、未来へ向けて思考を張り巡らせ、産業に、そして経済・社会に貢献・寄与出来るよう事業に取り組んでいきます。
 
 
シタテル株式会社
代表取締役CEO 河野秀和
 
 
※参考文献
The State of Fashion 2020 Coronavirus Update – McKinsey
 
 

本件に関するお問い合わせ先

シタテル株式会社 広報担当
メール press@sitateru.com